罹患後後遺症を含めた最新のCOVID-19の話題・治療とReal world Evidence

2025年4月11日(金曜日)~13日(日曜日)に
第65回日本呼吸器学会学術講演会が開催されました。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

●コーヒーブレイクセミナー7
罹患後後遺症を含めた最新のCOVID-19の話題・治療とReal world Evidence
進藤有一郎先生 名古屋大学医学部呼吸器内科 講師

1.COVID-19が引き起こす身体障害とLong Covid

COVID-19ウイルスは発症2日前から増殖が始まり、急性期症状を経て、4週以降には罹患後症状(Long Covid)を呈する症例がある。これらの後遺症は肺、心臓、脳、肝臓、消化管など多臓器にわたり、症状は非常に多岐にわたる。
Long Covidの発症機序については、以下の5つの仮説が示されている(Nature Reviews Microbiology 2023):
1. 免疫調整機構の異常
2. 腸内細菌叢の変化
3. 異常な自己免疫応答
4. 凝固異常および血管内皮機能障害
5. 脳幹・迷走神経からのシグナル異常
これらが単独もしくは複合的に関与することで、多様なLong Covid症状が引き起こされると考えられている。

2.呼吸器系ウイルスとの比較と細菌性肺炎リスク

COVID-19、インフルエンザ、RSウイルスなど主要な呼吸器系ウイルス感染症を比較した研究(NEJM 2015)は、若年層中心のデータではあるが、疾患の重篤度に関する有益な知見を提供している。
・小児におけるCOVID-19の入院リスクは、インフルエンザの9.8倍、RSウイルスの8.6倍
・成人ではCOVID-19の入院リスクはインフルエンザの7.8倍
・人工呼吸器管理や死亡率はCOVID-19が最も高い
また、ウイルス感染のピーク時には細菌性肺炎が増加する傾向があり、ウイルス感染が二次性細菌性肺炎の引き金になることが示唆されている。このため、ウイルス感染の予防が重要な戦略となる。

3.COVID-19重症化リスク因子(J-CAPTAIN Study)

名古屋大学を中心に14施設で行われたJ-CAPTAIN Studyでは、COVID-19および非COVID-19肺炎患者の重症化リスク因子を前向きに解析した。
COVID-19患者1519例における30日死亡率は4.5%、人工呼吸器管理等の重症化イベントを含めると26.3%であった。
多変量解析により、以下の重症化リスク因子が同定された。
– 年齢70歳以上
– 高血圧(オッズ比1.42)
– 慢性腎疾患(オッズ比3.01)
– 糖尿病、喫煙歴、悪性腫瘍
これらは、インフルエンザやRSウイルス感染における重症化リスクと共通する点が多く、急性呼吸器感染症の共通基盤と考えられる。
デルタ株とオミクロン株の間でリスク因子の変化はほぼなく、オミクロン株流行期には、誤嚥性肺炎や細菌性肺炎が増加する傾向が見られた。
一方で、両側性すりガラス陰影を伴う典型的なウイルス性肺炎像は減少した。

4. COVID-19治療:抗ウイルス薬・免疫調整薬

COVID-19の急性期治療戦略はほぼ確立されており、発症初期のウイルス増殖期には抗ウイルス薬(ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、エンシトレルビル、レムデシビル)、過剰な免疫反応期にはステロイド、JAK阻害薬、IL-6阻害薬などが使用される。
特に、ニルマトレルビル/リトナビルは、発症3日以内の非ワクチン接種者を対象にしたEPIC-HR試験において、入院または死亡のリスクを89%減少させた。
オミクロン株流行期のリアルワールドデータでは、ニルマトレルビル/リトナビルにより、死亡66%、入院24%のリスク減少が報告されている(香港データ)。

5.罹患後症状(Long Covid)と抗ウイルス薬の関係

Long Covidに対する早期治療の重要性が明らかになりつつある。
米国退役軍人データベースを用いた解析では、抗ウイルス薬を発症早期に投与することで、心血管イベント、倦怠感、息切れ、神経障害、腎障害などのリスクが有意に減少した。
モルヌピラビルやエンシトレルビルにおいても、同様にLong Covid関連症状の発生率を抑制する傾向が報告されている。
2023年11月1日までに発表された9件の臨床研究(約90万人)を対象としたメタ解析では、早期抗ウイルス薬投与はLong Covid予防に有効であることが示唆された。
一方で、Long Covid発症後に遅れて抗ウイルス薬を投与した場合は効果が認められなかった(JAMA Intern Med 2024)。
このため、「発症早期の抗ウイルス治療」が、罹患後症状を含む長期的な予後改善において鍵となる。
さらに、心血管イベントの抑制効果も示されており、心不全、不整脈、虚血性心疾患のリスク軽減に寄与する可能性がある。

6.臨床試験における課題と今後の展望

COVID-19の臨床試験では、入院・死亡・酸素飽和度・回復時間・ウイルス量などが主要アウトカムとされている。ワクチンの普及が進むにつれ、アウトカムイベントの発生率が低下し、必要なサンプルサイズが増加するという課題がある。
また、Long Covidは主観的な症状が多いため、臨床試験における評価指標の工夫が求められる。

Q and A

Q .Long Covidになりやすいリスク因子は?
A. 心血管イベントに関しては、心疾患の既往がある患者で頻度が高い。
重症化リスク因子がなくてもLong Covidを呈する症例は存在する。したがって、進藤先生は「インフルエンザと同様に、COVID-19も診断されたら全員に治療を検討すべき」との見解を示した。
Q. Long Covidに対して自費治療は可能か?
A. 原則として使用根拠(抗原検査等)を明確にした上での処方が望ましい。ウイルスが気道に長期間残存する「リザーバー仮説」もあるため、再検査の意義はあると考えられる。

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