片頭痛

当院ではウォンツ伊勢丘薬局薬剤師と定期的に勉強会を実施しております。
内容要約を以下に記します。

片頭痛の定義と特徴

片頭痛は、原因不明の慢性頭痛であり、主にこめかみから側頭部にかけて拍動性で、中等度から重度の頭痛発作が生じる疾患である。

疫学的には、好発年齢は20歳から40歳代の女性で、男女比1対4の割合で女性がおおい。

病態生理として、機序は明らかではないが、三叉神経や脳血管が関与する可能性が高いと言われている。最近はCGRPが関与していると言われている。

症状・所見:

前兆として視野にギザギザした光がちらつく閃輝暗点が見られることがある。こめかみから側頭部にかけて脈打つような拍動性の頭痛が生じるのが特徴である。

発作は月に1回から2回程度繰り返され、日常生活に支障をきたす。

光や音、匂いに対する過敏(羞明、音過敏、臭過敏)や、悪心・嘔吐を伴う。

予防としては、生活指導が重要である。ストレス、飲酒、光、騒音のある場所への外出などの誘因を避けることが推奨される。

予防薬としては、バルプロ酸、アミトリプチリン、ロメリジン、プロプラノロールが用いられる。

急性期治療薬

発作時の薬物療法としては、トリプタン製剤、鎮痛薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤がある。

第一選択としてはまずトリプタン系の薬剤が考えられる。症状的にそれほどひどくなければ、NSAIDs等を使うということもある。

非薬物療法としては、増悪因子を避け、暗く静かな場所で安静にすることが有効である。

トリプタン製剤の比較

トリプタン製剤は現在5種類ある。スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、ナラトリプタンであり、それぞれの違いについて説明する。

スマトリプタン

剤形と効果発現

商品名はイミグラン®であり、剤形としては錠剤、点鼻液、自己注射の3種類がある。

効果発現時間は、錠剤は30分、点鼻液は15分、自己注射は5分から10分と、早期に効果が期待できる。血中半減期は2時間半である。

特徴

日本で最初に発売されたトリプタン製剤であり、剤形も豊富である。悪心・嘔吐が強い場合や、即効性が求められる場合に適していると言われている。

用法・注意点

頭痛の薬を追加で投与する場合は、2時間以上間隔をあける必要がある。

妊婦に対しては有益性投与であるが、授乳婦は投与後12時間は授乳を避ける方が良いとされている。

ゾルミトリプタン

剤形と効果発現

商品名はゾーミック®で、剤形は錠剤と口腔内崩壊錠(RM錠)がある。効果発現時間は約3時間とやや長いが、効果の持続時間は2.4時間である。

特徴

水なしでも飲めるという利点がある。

用法・注意点

追加投与する場合は、2時間の間隔をあける必要がある。妊婦・授乳婦はそれぞれ有益性投与とされている。

エレトリプタン

剤形と効果発現

商品名はレルパックス®で、剤形は錠剤のみである。

効果発現には1時間かかるが、効果持続時間は3.2時間と、トリプタン製剤の中では比較的長い。

特徴

比較的早く効果が現れ、持続時間も長い。効き目もマイルドなため、首や胸の締め付け感といった副作用が少ない傾向があるとされる。

用法・注意点

追加投与は2時間ほどの間隔をあける。妊婦に対しては有益性投与であるが、授乳婦には授乳しないことが望ましいとされている。

リザトリプタン

剤形と効果発現

商品名はマクサルト®で、剤形は錠剤と口腔内崩壊錠(RPD錠)がある。

効果発現時間は1時間、効果持続時間は1.6時間と短い。

特徴

経口剤の中では立ち上がりが非常に速い。

用法・注意点

追加投与は2時間の間隔をあける必要がある。妊婦と授乳婦に対しては、それぞれ有益性投与とされている。

ナラトリプタン

剤形と効果発現

商品名はアマージ®で、剤形は錠剤タイプのみである。

効果発現時間は2.6時間と比較的ゆっくりであるが、効果持続時間は非常に長く、約5時間とされている。

特徴

月経時の片頭痛や、痛みの再発を抑えたい場合に適していると言われている。

用法・注意点

この薬剤のみ、追加投与する場合は4時間以上の間隔をあける必要がある。妊婦・授乳婦に対しては有益性投与である。

トリプタン製剤に共通する注意点

異なる種類のトリプタン製剤は、同日中に併用することはできない。それぞれの発作ごとに、24時間より長く間隔をあけて使用する必要がある。例えば、朝にA病院で処方され、午後にB病院を受診して同じ症状を訴えた場合、異なるトリプタン製剤が処方される可能性があるため、注意が必要である。

トリプタン製剤ではない製剤に選択的セロトニン1F受容体作動薬がある。

ラスミジタンコハク酸塩(ジタン系)

商品名はレイボー®である。

用法・用量

通常、成人には1回100mgを片頭痛発作時に経口投与する。ただし、患者の状態に応じて1回50mgまたは200mgを投与することも可能である。

用法・注意点

いかなる24時間においても総投与量200mgを超えないように管理する必要があるため、患者指導が重要となる。

頭痛の消失後に再発した場合、24時間あたりの総投与量が200mgを超えない範囲で再投与が可能である。例えば、朝7時に100mgを服用し、再度発作が起きて追加服用したい場合、24時間以内であれば追加で100mgまでは服用できる。しかし、200mgを服用したい場合は、総量が300mgになってしまうため、最低でも翌朝の7時以降でなければならない。

特徴・副作用

この薬剤は、トリプタン系に禁忌の心筋梗塞や脳卒中などの心血管系疾患を合併している患者にも使用できるという大きな利点がある。理由はトリプタン系にある血管収縮作用がないためである。

ジタン系は分子量が小さく、血液脳関門(BBB)を通過するため、トリプタン系のように服用タイミングがシビアではなく、多少服薬が遅れても脳内に移行して効果を発揮する可能性がある。

副作用として、初回投与時にめまいが起きやすい。

その他

レイボーは有効期限が短い薬剤である。製剤としての安定性の問題と考えられる。

卸からの納入時点でも、例えば12月末期限といった短いものしか入ってこないことがある。そのため、在庫管理や長期の持ち歩きには注意が必要である。

予防療法

CGRP関連抗体薬

新しい片頭痛の予防薬として、CGRP関連抗体薬がある。

片頭痛の発生に関与すると考えられているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)のモノクローナル抗体であり、現在3種類の注射薬が発売されている。

これらの薬剤は血液脳関門を通過しないため、中枢神経系の副作用が少ない。また、半減期が長いため、投与頻度を低くすることができる。

作用機序

CGRPは血管拡張と痛覚シグナル伝達を介して片頭痛に関与している。抗CGRP抗体は、CGRPの作用を阻害することで炎症や痛みを抑制すると考えられている。

薬剤の種類と特徴

  • エムガルディ®(ガルカネズマブ)、アジョビ®(フレマネズマブ)これら2剤は、CGRPそのものに結合してその作用を阻害する。
  • アイモビーグ®(エレヌマブ)こちらはCGRPの受容体に結合し、CGRPが受容体に結合するのを阻害する。

投与方法と間隔

  • エムガルディ®(ガルカネズマブ)初回に2本を皮下注射し、その後は1か月に1本を皮下注射する。初回に2本投与することで、より早期に血中濃度を安定させ、効果発現を早めることが期待される。通院は1か月ごととなる。
  • アジョビ®(フレマネズマブ)1か月に1本、または3か月に3本をまとめて皮下注射する方法が選択できる。受診が困難な患者にとっては、3か月ごとの投与が可能な点が利点となる。
  • アイモビーグ®(エレヌマブ)1か月に1本を皮下注射する。

副作用

3剤に共通して、注射部位の痛み、赤み、腫れが報告されている。特にエムガルディでやや多く報告される傾向がある。

アイモビーグに関しては、便秘が比較的多い。これは、CGRP受容体が消化管運動にも関与しており、受容体を阻害することで消化管の運動が抑制されるためと考えられる。添付文書でも、消化器障害としての便秘が1%以上報告されている。

費用

いずれも高額。 3割負担の場合で1本あたり11,000円から13,000円ほどかかる。エムガルディは初回に2本使用するため、約25,000円が必要となる。

適用および中止

これらの抗体薬は、既存の予防薬(バルプロ酸など)を使用しても効果が不十分な場合に検討される。具体的な基準として、3か月以上にわたり、月に4回以上の片頭痛発作がある患者が対象となる。

投与開始後は3か月を目安に効果を評価し、改善が見られない場合は中止を検討することも大切である。

開発中のCGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)

現在、注射薬だけでなく、内服のCGRP関連薬も開発が進んでおり、承認申請中である。これらはCGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)と呼ばれる。

リメゲパント

用途と用法

片頭痛の急性期治療および予防治療の両方に用いることができる。急性期治療では必要時に1回、予防治療では2日に1回服用する。

剤形

急性期治療にも対応するため、OD錠と通常の錠剤の2種類が開発されている。

副作用

悪心、尿路感染、肝酵素上昇などが報告されている。

アトゲパント

用途と用法

予防治療のみに用いられ、1日1回服用する。

剤形

通常の錠剤のみである。

副作用

悪心、便秘、体重減少などが報告されている。

開発状況

リメゲパントはファイザー社が2022年11月に、アトゲパントはアッヴィ社が2023年3月に日本での承認申請を行っている。ゲパント系薬剤は、開発段階で肝障害の報告があり、改良が重ねられた結果、承認申請が遅れた経緯がある。これらの内服薬が登場すれば、高額な注射薬に代わる新たな選択肢となり、片頭痛治療が大きく変わる可能性がある。

補足事項

痛覚変調性頭痛

国際頭痛分類において、「痛覚変調性頭痛」という新しい分類が2021年に提唱された。これは、従来の侵害受容性疼痛(炎症など)、神経障害性疼痛とは異なる、痛みの処理過程に問題が生じることで起きる頭痛を指す。

片頭痛治療薬の服用タイミング:前兆や予兆が重要

トリプタン製剤は、服用タイミングが非常に重要である。最も効果的なのは、キラキラした光が見えるなどの「前兆」が終わってすぐ、具体的には30分以内に服用することである。遅くとも1時間以内に服用する必要がある。このタイミングが早すぎても遅すぎても、効果は半減すると言われている。

一方、前兆がない患者も多く、全体の3割程度しか前兆はみられない。

前兆がない場合は、「予兆」(あくび、倦怠感、集中力低下、首や肩のこりなど)を自覚し、そこから頭痛が始まるまでの時間を把握して服用タイミングを計るか、あるいは痛み始めたらすぐに服用することが推奨される。

片頭痛の診断

片頭痛の診断において、「拍動性」であることは極めて重要な所見である。ズキンズキンと脈打つような痛みでなければ、片頭痛とは診断しにくい。締め付けられる、圧迫される、差し込むような痛みは、片頭痛の特徴とは異なる

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