2025年度(令和7年度)感染症健康危機に備えた対応訓練の動画配信を視聴し、感染対策の最新知見を学びました。
(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。
訓練の位置づけ
福山市では去年度・一昨年度に整備した計画を踏まえ、今後の訓練と対策を進める方針である。
訓練は弱点の可視化、連携・情報共有、役割分担の確認に資する一方、訓練がなければ計画通りに動けない局面が生じるため、反復して計画・参加し成果を高める必要があるとされた。
次のパンデミック想定と注目すべき病原体
パンデミックは「直近では」概ね10年ごとに起きている。
SARS-CoV-2(新型コロナ)は2020年発生であるため、2030年前後、すなわち「あと5年ぐらい」で起こり得るとの見立ても紹介された。
候補としてSARS-CoV-2、MERS、SARSの3種に加え、インフルエンザA型、鳥インフルエンザ、ヒトメタニューモ、RSウイルス、麻しんウイルスが挙げられた。
SARS流行期はワクチンも抗ウイルス薬もなく恐怖が大きかった経験から、ワクチン・抗ウイルス薬がない病原体が拡大すれば、流行規模と死者増加がより深刻化し得ると述べられた。
麻しんの世界的動向と日本への含意
世界的にはアフリカ、東南アジアで発生率が高い地域があり、北米でも多い状況が示された。
日本は麻しん排除国(国内の土着のウイルスはなくなった)であるが、海外からの流入は止められないため、流行地への渡航歴や流行地からの来訪者との接点がある発熱患者では、問診で麻しんを強く警戒する必要があるとされた。
国内届け出例の推定感染地として、ベトナム、タイ、モンゴル、フィリピンが挙げられ、特にベトナムが多い。
北米の年齢分布と日本国内流行の特徴
北米ではカナダ、米国で多く、米国は年間発生数が「今、1600、1700ぐらい」と言及された。年齢では19歳以下が67%、20歳以上が33%であり、小児に多い傾向である。
一方、日本では2008年に大きな流行があり、2014年、2019年(2018年にも言及)が続き、コロナ以降に一時減少したが近年増加し、2024年は「41週までで231例」とされた。年齢は米国と異なり20歳以上が多く、背景として「ワクチンを1回しか接種していない」等があり、感染例のうち「1回接種なし・不明」が約80%で、完全接種が不十分である点が示された。
感染経路としては国外由来が起点でも、国内で感染が連鎖した国内例が約60%とされ、ワクチン効果に加え、持ち込み時の早期把握と情報共有が重要であるとまとめられた。
麻しんの感染力と臨床像の要点
麻しんは空気感染で感染力が極めて強く、基本再生産数は12〜18(コロナの3倍)で、1人から12〜18人にうつり得るとされ、最終的な防御としてワクチンが要であると結論づけられた。
臨床経過は潜伏期間が1〜2週間で、忘れた頃に発症しやすい。カタル症状に続いて発熱と発疹が出現し、発疹は開始3〜5日後から目立ち、頭側から足先へ向けて拡大する特徴がある。コプリック斑は口腔内所見であるが確認が難しいことがある。丘疹性で隆起・融合し、全体として「汚く」見える進展を知っていれば想起しやすい。
他自治体での2017年事例に学ぶ時間軸
2017年の事例として、2月8日に東南アジアから帰国した患者の麻しんが判明し、約10日程度で次の症例が確認された。追跡できた範囲で7例程度まで連鎖し、初発例から約1ヶ月続いた。
最終暴露から14日間観察するため、初発からフォローアップを含めると1ヶ月半〜2ヶ月弱を要し得る点が、対応計画の前提として示された。
感染可能期間と健康観察の考え方
感染性は症状出現の「1日前」からあり、解熱後「3日間」程度まで続く可能性があるとされた。行動制限の指示を含め、この期間設定が重要である。接触後は「14日間」の健康チェックを行い、その「2倍」の期間で新規発生がなければ収束判断とする考え方が説明された。
0歳児起点のアウトブレイク詳細と情報公開の実務
報告ペーパー由来の具体例として、1月30日にアジアの国から羽田経由で広島へ帰着した「0歳児」がワクチン未接種のため感染し、流行型はD8型であった。0〜1歳児の保育所入所を契機に拡大した。保健所が中心となり医師会・保育所等と連携し、医師会も会合を組成して対策検討を行った。医療機関への情報提供は、マスコミ報道前に行う意図があったとされる。不特定多数が接触し得る施設については、公表の必要があり、施設の同意調整が課題となった。接触者調査は約680人、検査は約100例、ワクチン(研究ワクチン)の接種は約40名であり、集中的介入が行われた。
医療機関の受診調整・動線分離・職員要件
麻しん疑いでは電話で受診調整し、一般患者と動線を分け、一般患者がいない時間帯の診療や車内での問診・検査も選択肢である。
対応職員は麻しん抗体保有者が望ましいとされた。耳鼻科、眼科、皮膚科など「内科・救急以外」にも受診し得るため、全診療科が想定に入れるべきである。医療従事者は医師・看護師に限らず受付等も含むため、感染症学会の医療関係者ワクチンガイドラインを参照し、職種横断で備える必要がある。
検査・診断の枠組み(IgM/IgGと3点セット)
行政検査として、保健所経由で衛生研究所へ「血液・尿・咽頭ぬぐい液」の3点セットを提出する。
IgM抗体を同時に確認し、「IgM抗体が8以上」で麻しん陽性を疑う目安が示された。
麻しん様でもIgG抗体が非常に高い場合は修飾麻しんを考慮し、抗体結果を総合して判断する。
*筆者補足)修飾麻疹:ワクチン接種などで不十分な免疫を持つ人が麻疹ウイルスに感染し、典型的な高熱や発疹が出ずに軽症で経過する麻疹
接触後対応(緊急ワクチンと免疫グロブリン)
確定患者との接触で抗体がない可能性があれば、早期に緊急ワクチンを接種する。免疫グロブリンは状況に応じて接種し、その後は発症に注意して観察する流れである。
風しん:排除状態でも残る課題と2018年流行データ
風しんは土着ウイルスが日本にいない「排除状態」とされるが、散発例はあり麻しんより多いとも言及された。
最大の懸念は先天性風しん症候群(CRS)で、妊婦感染による児の奇形リスクである。風しんは麻しんより感染力が弱いが感染しやすく、潜伏期は麻しんより長いとされた。
2018年の流行では全国で約3000人が感染し、症状は発熱89%、発疹99%、リンパ節腫脹60%、目の充血41%で、三徴が揃ったのは56.6%であった。診断はIgM抗体で行われ、医療関係者は2900人中59人であった。対応は麻しんと同様に、抗体保有者が基本対応し、疑い患者と一般患者の動線隔離が重要である。
福山市保健所:過去10年の発生状況と2019年の経過
福山市では2016年に2件、2019年に12件の麻しん発生があった。2019年は6月21日に1例目が発生し、接触者から7月10日までにさらに7名が届け出となった。疫学調査後、接触者として計約680人に健康観察を実施し、7月14日以降4週間新規患者が認められなかったため、8月11日に収束判断となった。
2019年以降、市内発生はないが、他自治体発生により福山市民が接触者となる可能性があり、2024年には奈良市などからの依頼を含め、接触者健康観察を実施した。
机上事例:Bさん(30歳・糖尿病)の受診から行政検査まで
BさんはA国から2週間前に帰国し、11月16日に休日診療のCクリニックでコロナ・インフル検査はいずれも陰性であった。11月19日に発熱継続と発疹出現でDクリニックを、事前電話相談なく妻同伴で直接受診した。妻は「3日前から発熱」「先月帰国時の飛行機に麻しん患者がいたらしい」と説明した。
鑑別診断と受付スタッフの初動について(設問の要点)
発熱+発疹の鑑別として、麻しん、風しん、水痘、伝染性紅斑、手足口病、突発性発疹、髄膜炎菌感染症、デング熱、チクングニア熱(渡航歴あり)などが挙げられた。
受付で接触可能性を把握した場合、望ましいのは「1:速やかに決めていた経路で個室(可能なら陰圧室)へ誘導」であり、「2:その場で問診を続ける」は不適であるとされた。
感受性がある接触者は「3分間程度」の空間共有でも感染・発症し得るとの説明があり、1例目から即応が必要とされた。
問診項目とBさんの情報整理
問診では基礎疾患、症状と初発日、受診歴、1歳以上での麻しん含有ワクチン接種歴、家族罹患・接種歴、集団生活、勤務先、発症前1ヶ月の行動(海外渡航・国内旅行・人混み)、発症後行動を確認し、母子手帳等で接種記録を裏付けることが重要である。
Bさんは30歳男性で糖尿病があり、会社員で、発熱・発疹・鼻汁・咳嗽があり、A国に出張滞在していた。麻しんワクチン歴は1回で、妻は接種済み、子は未接種で、発症後は主に自宅にいたが11月16日にCクリニック受診歴があった。
医師診察、届出基準、保健所連絡の流れ
医師はN95マスクに加えフェイスシールドを着用し、麻しんに特徴的な発疹、発熱、咳嗽、鼻汁が揃ったため麻しん疑いと判断し、個室待機を継続した。
麻しん届出基準として、臨床症状3つ+病原体診断、臨床症状3つ、臨床症状1つ以上+病原体診断の区分が示され、今回事例は「臨床症状3つを満たす」ため、疑い例でも速やかな発生届提出が必要で、陰性で取り下げ得ることもあるとされた。確定に向けPCR検体採取が必要である。
行政検査の指示内容と必要検体量
保健所は医師へ、①サーベイランスシステムまたはFAXでの発生届提出、②血清IgM抗体検査、③PCR用検体の採取(咽頭ぬぐい液、EDTA加全血2ml以上、尿10ml)と検査票記載、④患者へ保健所から連絡が入る旨の伝達、の4点を指示する。咽頭ぬぐい液キットは保健所が準備し病院へ持参する。検体は「4度以下」で冷蔵保存し、広島県保健環境センターへ搬入する。
検体採取時PPE、院内環境、結果連絡
採取時PPEは空気感染対策としてN95、飛沫対策としてフェイスシールド、念のため手袋を着用し、水痘疑いでも有効とされた。
患者退室後もウイルスは少なくとも「1時間」、最大「2時間」以内は浮遊し得るため換気が必要で、特別な消毒は不要だが、麻しんはエンベロープを持つため消毒薬が有効で、手指・環境にはエタノールが有効とされた。
結果は当日または翌日に保健環境センターから保健所へ連絡され、保健所から医療機関、医師から本人へ伝達される。陽性時は空気感染疾患として個室または陰圧室入院、転院可能性、自宅療養なら感染可能期間(発症前1日〜解熱後3日経過まで)の接触回避、公共交通機関不使用、受診前連絡を指導する。
接触者定義と緊急ワクチンの条件
接触者とは、
感染可能期間内に麻しん患者と接触した者(接触時間は不問)、
2m以内で飛沫を浴びた者、
同一時間に空間共有した者、
患者退出後「1時間」〜最大「2時間」以内に同空間に滞在した者
である。ワクチン未接種者は接触「3日以内」で緊急ワクチン(原則MR)が有効である。
妊婦や免疫抑制状態ではワクチン禁忌であり、接種後「2ヶ月」は妊娠を避けるよう伝える必要がある。
