頻尿のほとんどは泌尿器科疾患が原因ではない

2026年2月26日に開催された
高齢者のプライマリ・ケ ア Forum in 福山 2026に於いて
講演2の内容です。

(注意)あくまで私の聴講メモですので記載内容が正確でない可能性があります。責任は負えませんのでご了承ください。

頻尿のほとんどは泌尿器科疾患が原因ではない

座長:德永 葉 先生 (德永医院)


演者

黒田 秀也 先生
泌尿器科くろだクリニック 院長


【重要事項リスト】

  • 夜間頻尿を訴える患者の約8割は、就寝前の過剰な水分摂取などによる「夜間多尿」が原因である 。
  • 寝る前に水分を摂取しても虚血性心疾患の予防にはならず 、むしろ夜間排尿による転倒や骨折、死亡率の上昇を招く .
  • 成人の正常な1日の尿量は「体重×20mL」程度である 。
  • 夜間多尿の背景には、重症心不全、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、未治療の糖尿病といった内科疾患が隠れていることが多い 。
  • 高齢者の過活動膀胱(OAB)治療において、抗コリン薬の単剤投与は認知機能低下などの副作用リスクがあるため避けるべきである 。

夜間頻尿と「水飲み信仰」の危険性

夜間頻尿の原因として最も多いのが、過剰な水分摂取です 。日本では「血液をサラサラにするため」「足がつるのを防ぐため」といった思い込みで水分を多く摂る患者がいますが、過剰な水分摂取で心疾患は予防できません 。逆に、夜間にトイレに起きる回数が増えることで転倒・骨折のリスクが高まり、結果的に寿命を縮める要因となります 。

成人の適正な1日の尿量は「体重×20mL」程度であり 、それを大きく超える過剰な水分摂取は控えるよう指導することが重要です 。

【症例から学ぶ:過剰飲水による弊害】

  • 63歳男性(ランニング中に失禁): 汗をかく前に多量に飲水したため、運動中に尿となり失禁 。体重と水分量をコントロールする指導で改善しました 。
  • 20歳女性(引っ越し業): 「汗をかくから」と1日4〜5Lもの水を飲み、エレベーター内で失禁 。明らかな飲み過ぎであり、飲水指導により改善しました 。

排尿日誌の活用と隠れた内科疾患の発見

夜間頻尿の診療において「排尿日誌」は欠かせないツールです 。

1日の尿量の33%以上が夜間に排出される「夜間多尿」のケースでは、泌尿器科的な異常ではなく、他の内科的疾患が原因となっていることが非常に多くみられます 。

【症例から学ぶ:多尿に隠れた内科疾患】

  • 未治療の糖尿病(43歳男性): 1日5400mLもの多尿 。血液検査でHbA1cが13.9%(未治療の重症糖尿病)と判明し、内科的治療へ繋がりました 。
  • 重症心不全(60歳男性): 心臓移植待ちの患者で、夜間に3回、計1000mL近い排尿 。泌尿器科疾患ではなく、心不全による夜間多尿でした 。また、67歳男性や75歳男性の症例でも、心筋症や弁膜症に伴う心不全(肝静脈拡大)があるにもかかわらず、1日2000mL以上飲水しており、心不全悪化のリスクとなっていました 。
  • 睡眠時無呼吸症候群/OSAS65歳男性・62歳男性): 前立腺肥大症の薬が効かず受診 。排尿日誌から夜間多尿が疑われ、検査の結果OSASと判明 。CPAP治療により夜間頻尿が劇的に改善しました 。ある調査では、夜間頻尿を訴える女性患者43名において43名全員がOSASであり20名が重症だったというデータもあります 。

頻尿に隠れる危険な泌尿器科疾患

過活動膀胱(OAB)に似た症状(頻尿や尿意切迫感)を呈するものの、実際には別の危険な器質的疾患が原因となっているケースも存在します 。

【症例から学ぶ:OABと誤認しやすい疾患】

  • 尿管結石(55歳女性): 頻尿・残尿感で受診 。OABが疑われましたが、エコー検査で膀胱に近い尿管に結石が発見されました 。
  • 膀胱がん(60歳男性など): 症状はOABにそっくりでしたが、尿潜血が認められました 。検査の結果、膀胱がんが判明しました 。

過活動膀胱(OAB)治療のポイント

OAB治療薬にはミラベグロンやビベグロン(ベオーバ)などのβ3作動薬と、抗コリン薬があります 。

高齢者に対して抗コリン薬を使用すると、口渇や便秘を引き起こすだけでなく、認知機能の低下を招く恐れがあります 。そのため、現在では抗コリン薬の単剤処方は推奨されておらず、β3作動薬を中心とした治療設計が主流となっています 。

臨床的応用(日常診療への活かし方)

患者が「頻尿」を訴えた際、まずは問診で「夜寝る前に水を飲んでいないか」「服薬時に多量の水で薬を飲んでいないか」を確認すると同時に、飲水指導が非常に効果的です 。

多量のお水で服薬している場合は、服薬ゼリーの活用などを提案します 。

今後の課題

患者が抱く「水はいくら飲んでも健康に良い」という強い思い込み(水信仰)を解きほぐすことは容易ではありません 。患者の生活背景(就労状況、運動習慣など)や実際の排尿日誌のデータをもとに、具体的な飲水コントロールの意義を根気よく分かりやすく指導していくコミュニケーションスキルの向上が、多職種連携において求められます。

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